マニフェスト(まにふぇすと)
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産業廃棄物処理に使用される「マニフェスト」とは
宣言や声明を意味するマニフェスト。近年では、選挙の際に政党や立候補者が発表する公約の意味で使われることもありますが、産業廃棄物の処理においては、産業廃棄物管理票のことをマニフェストと呼びます。
マニフェスト(産業廃棄物管理票)は、廃棄物の処理が適正に実施されたかどうか確認するための書類で、産業廃棄物の排出事業者が処理を委託する際に作成します。このマニフェスト制度が設けられた目的は、排出事業者の責任を明確化することと、不法投棄を未然に防止することです。産業廃棄物は、排出事業者が自らの責任で適正に処理する義務があるため、他者にその処理を委託する場合には、マニフェストを交付することで、委託した産業廃棄物が適正に処理されていることを把握できるという利点があります。なお、排出事業者が自ら廃棄物を処理する場合には、マニフェストの交付は不要となっています。
マニフェスト制度が厚生省(現在の環境省)の行政指導で始まったのは、1990年のこと。1993年には、産業廃棄物のうち、爆発性、毒性、感染性、その他の人の健康や生活環境に被害を生じるおそれのある特別管理産業廃棄物の処理を他人に委託する場合に、マニフェストの使用が義務付けられました。続いて1998年からはマニフェストの適用範囲がすべての産業廃棄物に拡大。従来の複写式伝票(紙マニフェスト)だけでなく、電子情報を活用した電子マニフェストも導入され、いずれかを選んで使用できるようになりました。
紙から電子へ。廃棄物の情報や処理状況を共有
では、マニフェストはどのように使用されるのでしょうか。紙マニフェストを使う場合は、記入用紙を全国の産業廃棄物協会で購入します。紙マニフェストに記入するのは、産業廃棄物の名称や数量、運搬業者名や処分業者名など。この書類を排出事業者、収集運搬業者、処分業者の間でやりとりします。
処理業者は紙マニフェストの交付後90日以内に、委託した産業廃棄物の中間処理(中間処理を経由せず直接最終処分される場合も含む)の終了を、紙マニフェストの返送によって知らせます。また、中間処理を経由して最終処分される場合は最終処分の終了を、紙マニフェストの交付後180日以内に知らせることが求められます。期限内に処理終了の報告がない場合、排出業者は処理状況を確認して必要な対策を講じ、その旨を都道府県などに報告することが義務付けられています。
紙マニフェストと同様の情報が電子化され、ネットワークを介して排出事業者、収集運搬業者、処分業者の3者間で共有されるのが電子マニフェストです。これを利用することで、事務処理の効率化やデータの透明性の確保、法令の遵守の徹底などが図られます。管理を行うのは、日本産業廃棄物処理振興センター情報処理センター。様々な情報の通知やマニフェストの保存・管理を担当します。
マニフェストの存在意義~環境汚染防止のために
マニフェスト制度は、排出事業者が産業廃棄物の流れを自ら把握・管理する仕組みです。紙マニフェストの交付や送付を行った場合は、マニフェストの交付日または送付を受けた日から5年間保存することが、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃掃法)で定められています。
また、マニフェストの不交付や虚偽記載、記載義務違反および保存義務違反などがあった場合、委託した廃棄物が不適正に処理された場合などは、排出事業者および処理業者が都道府県などから措置命令(法第19条の4第1項)を受けることもあります。
このように詳細にわたって取り決められているのは、産業廃棄物の適正な処理が求められているからです。制度の内容を把握して正しく活用することで、不適正な処理による環境汚染や不法投棄を未然に防止することが期待されています。