ダイオキシン(だいおきしん)
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実は多種に渡る、毒性のあるダイオキシンとは
ダイオキシンについて詳しく知らない人でも、有毒物質の一種であるなど、あまり良くないイメージを持っている方が多いかもしれません。
ダイオキシンは、正式にはダイオキシン類と言います。これは単一の物質ではなく、一般にはポリ塩化ジベンゾ-パラ-ジオキシン(PCDD)とポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)がまとめてダイオキシン類と呼ばれ、コプラナ-ポリ塩化ビフェニル(co-PCB)(または「ダイオキシン様ポリ塩化ビフェニル(DL-PCB)」ともいう)などがダイオキシン類似化合物と呼ばれています。ダイオキシン類は、基本的には炭素で構成されるベンゼン環2つが酸素で結合し、それに塩素が付いた構造をしています。塩素の数や付く位置によって形が変わるため、細かく分類すると200種類以上が存在し、その内、毒性があるのは29種類と言われています。
ごみ焼却、自動車排出ガス、農薬など身近な発生源も
ダイオキシン類の主な発生源はごみ焼却による燃焼ですが、その他にも塩素によるパルプなどの漂白、製鋼用電気炉、たばこの煙、自動車排出ガスなど様々な発生源があります。ダイオキシン類は処理施設で取り切れず大気中に放出されたり、かつて農薬に使われていた物が土壌に蓄積されたりしているとの報告があります。
分解されにくい物質のため、環境に放出されると土壌や水環境中に長期間残留し、食物連鎖を通して生物濃縮され、生体に影響を及ぼすことも。体内に入ってしまうと体外に排出されるのに時間がかかるという点も特徴の一つで、分解されて体外に排出される速度が非常に遅く、人の場合は取り込んだ量が半分の量になるまでに約7年かかるとの報告もあります。
動物実験では、発がん性、生殖毒性、免疫毒性、神経毒性などが報告されているダイオキシンですが、私たちの通常の生活で食品などを通して摂取する量はごく微量で、毒性が生じて健康に支障をきたすほどではないと考えられています。
ダイオキシン類減少につながるごみの減量と適正な処理
通常の環境レベルでは汚染の恐れはないとされるダイオキシンですが、自然環境や野生動物などへの影響を考慮し、排出量を減らそうという取り組みが進んでいます。日本ではダイオキシン類、特にPCDDおよびPCDFの約 9割が、身の回りのごみや産業廃棄物を焼却する時に排出されると推定されています。そのため、焼却するごみの削減や焼却施設の改善などが進められてきました。また、汚染した土壌の調査やそれを浄化する技術の開発などの対策も進んでいます。その結果、ダイオキシン類の排出量は着実に減少し、大気や水質におけるダイオキシン類濃度は、ほぼ全国的に環境基準をクリア。ダイオキシン類汚染の改善は進んでいます。
私たちが日常生活で取り組みたいことは、ダイオキシン類の問題に関心を持ち、焼却するごみをできるだけ減らすよう努めることです。また、ダイオキシン類の発生量を抑えるためには、家庭用の焼却炉などの使用も控えることが望まれます。家庭ごみの処理は、正しく分別を行って自治体ごとのごみ処理のルールに従いましょう。