産業廃棄物(さんぎょうはいきぶつ)
目次
産業廃棄物が簡単に廃棄できない理由とは?
産業廃棄物とは、事業活動に伴って排出される廃棄物のことです。産廃(さんぱい)とも略されます。この産業廃棄物以外の廃棄物を一般廃棄物といいます。
産業廃棄物は、産業の巨大化に伴い大量に排出されており、その量は一般廃棄物の数倍に達するとされます。その中には、人や環境に有害な物質も大量に含まれ、公害発生の原因になっていることから、1970年には「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(廃棄物処理法)が制定されました。産業廃棄物の定義を明確にし、その処理について義務者や処分の方法などを規定したものです。この法律において、産業廃棄物は排出事業者が自らの責任で適正処理することが義務付けられています。
処理にあたっては、運搬、処分、保管により環境を害さないよう、政令の定める基準に従って行わなければなりません。事業者は産業廃棄物の処理、処分を他社に委託することもできますが、産業廃棄物の処理を業とするには、都道府県知事の許可が必要であるため、その許可を受けた業者に依頼しなくてはなりません。
産業廃棄物は主に20種類に分類される
廃棄物処理法の第12条では、産業廃棄物を、工場などの事業活動において発生する20種類の廃棄物と輸入された廃棄物であると定めています。
事業活動に伴う20種類の廃棄物とは、燃えがら、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類、ゴムくず、金属くず、ガラスくず・コンクリートくずおよび陶磁器くず、鉱さい、がれき類、ばいじん、紙くず、木くず、繊維くず、動植物性残さ、動物系固形不要物、動物のふん尿、動物の死体、以上の産業廃棄物を処分するために処理した物で、上記の産業廃棄物に該当しない物(例えばコンクリート固形化物)です。
なお、事業活動に伴って生じた廃棄物の内、燃えがら、汚泥、廃油などはどのような業種から出されても産業廃棄物となりますが、紙くず、木くず、繊維くずや動物の死体などは特定の業種から排出された場合しか産業廃棄物になりません。例えば紙くずの場合、製紙会社などの紙製品製造業から排出された物は産業廃棄物ですが、商店などから出た物は一般廃棄物となり、これを産業廃棄物の指定業種と呼びます。環境汚染上の問題が少なく、一般的に見て市町村でも対処可能な廃棄物だとみなされることから、事業活動から出ても産業廃棄物に該当しない「事業系一般廃棄物」となります。
環境破壊、健康被害など産廃が引き起こす社会問題
産業活動により排出される大量の有機廃棄物である産業廃棄物は、様々な社会問題を引き起こしてきました。日本でも1960年代の急速な工業化と共に、産業廃棄物の処理が深刻な問題となっています。
具体的な問題としては、まず生活環境の汚染や健康被害が挙げられます。産業廃棄物の焼却によって発生するダイオキシンは大気汚染を招き、廃棄物の投棄、海洋処分は土壌汚染や水質汚濁を深刻化させてきました。産業廃棄物の最終処分場付近において、地下水汚染や粉塵による健康被害が報告されている地域もいくつもあります。
最終処分場の不足も避けては通れない問題です。廃棄物の排出量が増え、最終処分場(埋立地)が不足しており、土地の確保が大きな課題となっています。平成28年度の最終処分量及び平成29年4月1日現在の最終処分場の残存容量から、最終処分場の残りの容量(残余年数)を推計すると全国では17年です。
さらに不法投棄の問題もあります。処理技術の向上による処理費用の増加などにより、法令に定められた処理・処分をしない不法投棄が後を絶ちません。その件数は1年に1000件を超えるといわれ、不法投棄地では水質汚濁や土壌汚染などの環境汚染が起こっています。
不法投棄、不適切処理を防ぐマニフェスト制度とは
このような社会問題を解決していくために制定されたのが廃棄物処理法ですが、加えて不法投棄や不適切な処理を防ぐために採用されているのが「マニフェスト制度」です。これは、産業廃棄物の処理、処分を他社へ委託する場合に、「マニフェスト(産業廃棄物管理票)」という書類を作成することを義務付けた制度。事業者が排出する産業廃棄物の種類、数量、運搬業者名、処理業者名、取り扱い注意事項などを明記し、産業廃棄物と共に各業者に渡しながら、産業廃棄物の処理の流れを確認するという仕組みです。
このマニフェスト制度は1990年に開始され、1998年からは適用範囲がすべての産業廃棄物に拡大されました。委託業者が不法投棄を行った場合、排出者も罪に問われることになるため、マニフェストを正しく交わすことは、ごみを出す人の身を守ることにもつながります。不法投棄を防ぎ、地球環境を守っていくためにも、信頼できる、許可を持った業者を見極め、廃棄物の最終処理まで責任を持って見届けることが求められているのです。