鉄鋼スラグ(てっこうすらぐ)
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スラグ=鉱滓?鉄鋼スラグとは
鉄鋼スラグとは、鉱石から金属を還元・精錬する際などに、特定の成分が溶融・分離してできたスラグ(鉱滓)の内の一つで、鉄鋼製品の製造工程で発生するスラグのこと。
具体的には、鉄を還元する際、鉄鉱石に含まれるシリカやアルミナなどの鉄以外の成分を取り除くため、石灰石を加えることで溶融し、融点を下げます。その鉄以外の成分と鉄を分離し、回収しやすくするという工程で回収物、副産物となるのが鉄鋼スラグです。金属製造工程起源のスラグには、鉄鋼スラグ以外に、非鉄金属スラグもあります。
冷却方法により、徐冷と水砕に分けられる高炉スラグ
鉄鋼スラグは主に、高炉スラグと製鋼スラグに分類されます。高炉スラグは、銑鉄を製造する高炉で、鉄鉱石に含まれるシリカなどの鉄以外の成分と、副原料の石灰石やコークス中の灰分が一緒に溶融分離、回収された物。この高炉スラグは、銑鉄1tあたり約290kg生成されます。高炉から取り出されたスラグは、約1500度の溶融状態となりますが、冷却方法によって高炉徐冷スラグと高炉水砕スラグに分類。溶融スラグを冷却ヤードに流し込み、自然放冷と適度の散水により徐冷処理した物を、高炉徐冷スラグと呼びます。結晶質で岩石状なのが特徴です。一方、溶融スラグに加圧水を噴射するなど、急激に冷却処理をしたスラグが高炉水砕スラグ。ガラス質で粒状の鉄鋼スラグです。
製鋼工程で生成される製鋼スラグ
銑鉄やスクラップから成分を調整し、加工性などに優れた鋼を製造する製鋼工程で生成されるスラグは、製鋼スラグと呼ばれます。製鋼スラグには、冷却ヤードで放冷や散水によって徐冷処理された後に加工され、転炉系用途に利用されるスラグと、鉄スクラップを溶解・精錬する際に生成する電気炉系スラグがあります。電気炉系スラグはさらに、酸化精錬で生成する酸化スラグと還元精錬で生成する還元スラグに分類。電気炉酸化スラグは電気炉鋼1トンあたり約70kg、還元スラグは約40kg生成されます。
環境に優しい資材として注目度が高まる鉄鋼スラグ
鉄鋼スラグは、工場生産による安定した品質をベースに、省エネルギー、省資源、CO2削減などを可能にする地球環境に優しい資材としても注目を集めています。
例えば水と反応して固まり、時間を経るごとに強度が高まる水硬性が特徴の高炉徐冷スラグは、主に路盤材に使用。アルカリ骨材反応を生じる恐れがなく、粘土・有機不純物を含まないことから、天然骨材と同様にコンクリート用粗骨材としても利用されています。
また、高炉徐冷スラグ同様、水硬性があり、アルカリ骨材反応を生じる恐れがない高炉水砕スラグは、微粉砕による強い潜在水硬性から高炉セメントなどに使用。水との反応時の発熱速度が小さい、化学的な耐久性が高いなどの特徴を活かし、港湾などの大型土木工事にも活用されています。
さらに製鋼スラグは、主に路盤材として使用。粒子密度と硬度が高く耐磨耗性に優れていることから、アスファルトコンクリート用骨材に重宝される他、粒子密度と単位体積重量が大きいことから、土工用材・地盤改良材としても使用されています。