高分子廃棄物(こうぶんしはいきぶつ)
目次
3種に分けられる、高分子化合物とは
高分子化合物については高校の化学で学ぶので、覚えている人も多いかもしれませんが、高分子や高分子化合物について、改めておさらいしてみましょう。
高分子または高分子化合物とは分子量が大きい分子のことを指します。高分子はその由来から、自然界で作られる天然高分子化合物、人工的に合成された合成高分子化合物、天然高分子から科学的に誘導された半合成高分子化合物などに分けられます。天然高分子化合物には、セルロース、アミノ酸、でんぷん、天然ゴム、雲母、石英、ダイヤモンドなどが含まれます。合成高分子化合物は、合成樹脂(プラスチック)、シリコン樹脂、合成繊維、合成ゴム、ガラスなど身近な素材が多く挙げられます。半合成高分子化合物はセルロイド、レーヨンなどです。
環境問題を引き起こす高分子廃棄物とは
軽くて便利なプラスチックなどの合成樹脂、合成繊維など合成高分子化合物を用いた製品は私たちの生活の中で数多く利用されています。包装材料など多くの分野で用いられ、廃棄量は増えていますが、これらの高分子材料は自然環境の中で分解されないため、環境問題を引き起こしています。
埋め立て処分をするための処分場が不足していることから、リサイクルへの移行が進められていますが、再資源化率はあまり上がっていないのが現状。そのため、全体の使用量を減らす、長く使える製品を作ることで廃棄量を減らすなどの取り組みが進められています。
合成高分子化合物のごみを減らすために
プラスチックごみの廃棄問題を打開するため、新しい素材の研究、開発にも取り組んでいます。1980年代から研究が進められているのが「生分解性プラスチック」です。生分解とは、微生物の作用によって元の化合物が他の物質に分解すること。生分解性プラスチックは、「使用するときには、従来のプラスチックと同様の性状と機能を維持しながら、使用後は自然界の微生物などの働きによって生分解され、最終的には水と二酸化炭素に完全に分解されるプラスチック」とされています。
すでに、微生物産生系、天然物系、化学合成系など、様々な生分解性プラスチックが開発されています。フィルム、シートなどの原料に利用されるポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、他の生分解性プラスチックと混合することでフィルムなどに製品化さるデンプン、食品トレイや包装用フィルム、レジ袋などに利用されるポリ乳酸などがあります。
生分解性プラスチックの利用は欧米が先行しています。日本では1989年に、生分解性プラスチックに関する技術の確立や実用化の推進を目的に、樹脂メーカーや加工メーカー、商社などによって、生分解性プラスチック研究会(現在の日本バイオプラスチック協会(JBPA))が設立されました。この機関により設けられた「グリーンプラ識別表示制度」では、有害重金属類を基本的に含まず、生分解性と安全性が一定基準以上あることが確認された材料のみから構成されるプラスチック製品をグリーンプラ製品と認定し、製品にシンボルマークを付けることが許可されています。
このような認定制度も導入され、生分解性プラスチックの品質の確保が図られていますが、普及については決して順調とはいえません。その理由として、従来のプラスチックに比べて高価であること、物性や成形性、性能について従来品を超える評価を受けるものが少ないことなどが挙げられます。循環型社会の実現に向けてさらなる研究・開発、普及の拡大が求められる他、消費者の関心を高めるための広報活動も必要だとされています。