行旅病人及行旅死亡人取扱法(こうりょびょうにん および こうりょしぼうにん とりあつかいほう)
目次
「行旅死亡人」とはどういう死亡をした人?
「行旅病人及行旅死亡人取扱法」とは、旅行中の人、移動中の人、漂白中の人などが病気になった時、もしくは死亡した場合に、その現場となった市町村が救護することなどを定めた明治32年の法律第93号です。
行旅病人及行旅死亡人取扱法の第一条において、「行旅病人ト称スルハ歩行ニ堪ヘサル行旅中ノ病人ニシテ療養ノ途ヲ有セス且救護者ナキ者ヲ謂ヒ行旅死亡人ト称スルハ行旅中死亡シ引取者ナキ者ヲ謂フ」と定めています。つまり、歩くことができない病人で、療養の方法がなく、かつ救護者がない人。また、死亡者の場合は、引き取り手がない人のことを指すとしています。
この中で、死亡人においては死体の埋葬または火葬をするように定めています。また、死亡人の取り扱いに要した費用については、遺留の金銭や有価証券をこれに充てること、それでも足りない場合で、相続人や扶養義務者がいない時や明らかでない時には、遺留物品を売却してその費用に充てるものとしています。
この法律の実施のため、各自治体は施行規則や細則を定めています。例えば「名古屋市行旅病人及行旅死亡人取扱法施行細則」では、第3条において「市長は、法第3条(法第8条第2項において準用する場合を含む。)の規定により通知をするときは、行旅病人若しくはその同伴者又は行旅死亡人の同伴者(以下「被救護者」という。)の扶養義務者に対し、被救護者を引き取るべき期間(以下「引取りの期間」という。)を定め、引取りの期間及び被救護者の状況を併せて通知するものとする」と定めています、
今、改めて注目を集める理由とは
行旅病人及行旅死亡人取扱法については、交付から長い歳月を経ているものの、特定の住居を持たないホームレスと呼ばれる人々の増加、深刻化など、現代ならではの社会問題により、改めて注目を集めています。特にホームレス自立支援法成立前には、ホームレスに対する施策として、「生活保護法」の適用や「行旅病人及行旅死亡人取扱法」に基づく施策を自治体が講じる例もありました。
近年でも、ホームレス患者が医療機関を受診した際の医療費の支払い方法として、生活保護以外に「行旅病人及行旅死亡人取扱法」によって充当するケースも見られます。