無縁墓(むえんはか)
無縁墓の定義とは
「無縁墓」とは「無縁墳墓」ともいわれ、子供や親戚など、お墓の継承者やお墓を管理する縁故者がいなくなった墓のこと。もしくは弔う縁者のない死者のための無縁塚、万人塚、無縁塔のこと。「墓地、埋葬等に関する法律施行規則」の第3条には、「死亡者の本籍及び氏名並びに墓地使用者等、死亡者の縁故者及び無縁墳墓等に関する権利を有する者に対し1年以内に申し出るべき旨を、官報に掲載し、かつ、無縁墳墓等の見やすい場所に設置された立札に1年間掲示して、公告し、その期間中にその申出がなかつた」場合には、無縁墳墓等に埋葬、埋蔵することが記されています。
「無縁墓」が増える理由とは
無縁墓が増えた背景には、家族のあり方の急速な変化が挙げられます。かつて日本では農村地域を中心に土葬が大半を占め、原則として一人一墓というスタイルが通例でした。その後、明治時代に民法で「家制度」が定められると、先祖代々まとめて、一家一墓にまつるというスタイルが広まります。
しかし第2次世界大戦後、多くの戦死者が出たこと、また仕事を求めて農村の人々が都会へ就職して墓のある地元から離れたこと、核家族化の進行などさまざまな要因から「無縁墓」が急増しました。
さらに現代社会ならではの問題として、少子高齢化が進んだこと、住まいの流動性により、無縁墓の問題はさらに拡大。例えば、長子は生まれ育った場所で一生を過ごし、家を守り、死を迎えるという考え方が薄れ、先祖崇拝、家系の継承などへの意識が希薄になってきました。その世相を反映するように、お墓に対する信仰は崩壊しつつあります。
現代の「墓」事情~新しい選択とは
こうした社会背景から、墓石の不法投棄などに関する事件も社会問題化するようになりました。無縁墓となり、不要になった墓石の処理を依頼された運搬業者や墓石店などが、処理費用を支払わないために大量の墓石を不法投棄するというケースです。
そのような事態を避けるために浸透してきたのが、墓じまいや永代供養の仕組みです。今では終活の一つとして、墓じまいをする人や、自分の死後は永代供養にしてほしいと生前に申し込む人も増えています。
墓じまいとは、先祖代々の墓が現在の住居から離れていることや、自分たちの子供や孫世代に負担をかけたくないという理由から、お墓を撤去し、遺骨を供養してくれる所に移したり、永代供養墓地に改葬したりすることです。また、依頼された寺院や霊園などが遺骨を預かり、一定期間遺骨を安置し、供養した後、他の遺骨と共に永代供養墓などで供養を行うのが永代供養です。
その他にも、近年は無縁墓となることを懸念し、お墓をつくらない、散骨する、共同埋蔵式の墓地を選択するなど、お墓のあり方を模索する人が増加。家族、先祖、宗教など固定概念にこだわらない多様な考え方で“死”を捉える人が増えているようです。