2022/10/31
家庭から出るごみと事業者が出す産業廃棄物(産廃)の違いはご存じですか?それぞれ処理する方法が法律で定められているため、適切なやり方で処理しなければなりません。
本記事では、産業廃棄物やその処理の流れについて詳しく解説します。法律に違反した際の罰則や、不法投棄などを規制するマニフェスト制度についても説明しますので参考にしてください。
目次
産業廃棄物とは?
産業廃棄物(産廃)とは、工場などの事業活動から排出される廃棄物を指します。家庭から出るごみは一般廃棄物であり、処理責任は市区町村にあります。一方で、産業廃棄物の処理責任は排出事業者自身にあります。
産業廃棄物の処理に関する法律には、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(廃棄物処理法)があり、産業廃棄物を処理するルールや違反した際の罰則などが定められています。
産業廃棄物は、排出する事業者が責任を持って処理することが義務付けられています。定められた方法で処理しなければ厳しい罰則を受けますので、社会的信用を失いかねません。
また産業廃棄物の処理には、都道府県知事の許可が必要です。無許可で処理を行った場合も、法律で罰せられます。
産業廃棄物の種類
産業廃棄物とは、工場などから排出される廃棄物のうち、廃棄物処理法で規定された20種類の廃棄物を指します。
産業廃棄物の具体例は、以下のとおりです。
区分 | 種類 | 具体例 |
---|---|---|
あらゆる事業活動に関するもの | 燃え殻 | 石炭、焼却炉の灰など |
汚泥 | 生産工程や排水処理で排出された泥状のもの | |
廃油 | 鉱物油、潤滑油、絶縁油など | |
廃酸 | 廃硫酸、廃塩酸など | |
廃アルカリ | 廃ソーダ液、金属石鹸廃液など | |
廃プラスチック類 | 合成樹脂くず、合成繊維くずなど | |
ゴムくず | 生ゴム、天然ゴムくずなど | |
金属くず | 金属の破片、研磨くず、切削くずなど | |
ガラス、コンクリートおよび陶磁器くず | ガラスくず、コンクリートくず、陶磁器くずなど | |
鉱さい | 電気炉で発生した溶解炉かすなど | |
がれき類 | 建造物で発生したコンクリート破片など | |
ばい塵 | 産業廃棄物焼却施設で発生したばい塵など | |
特定の事業活動に関するもの | 紙くず | 建設業、パルプ製造業、製紙業、紙加工品製造業、新聞業、出版業、製本業、印刷物加工業などで発生した紙くず |
木くず | 建設業、木製品製造業、パルプ製造業、輸入材木卸売業などで発生した木材片やおがくず | |
繊維くず | 衣服その他の繊維製品製造業以外の繊維工業、または建設業から発生した木綿くず | |
動物性残さ | 食料品製造業、医薬品製造業、香料製造業で発生した動物または植物に関する固形状の不要物 | |
動物性固形不要物 | と畜場で処理した獣畜や食鳥に関する固形状の不要物 | |
動物のふん尿 | 畜産農業で排出される動物のふん尿 | |
動物の死体 | 畜産農業で排出される動物の死体 | |
産業廃棄物を処分するために処理したもので、他の産業廃棄物に該当しないもの | 汚泥のコンクリート固形物など |
上記の表で「あらゆる事業活動に関するもの」は、どのような業種から出されても産業廃棄物になります。一方で「特定の事業活動に関するもの」は、特定の業種で排出された場合しか該当しません。
産業廃棄物の処理の流れ
産業廃棄物は、家庭ごみのように決められた曜日に集積所に出せば良いものではありません。処理方法には細かいルールが定められています。
産業廃棄物を処理する際の流れは、大きく分けて以下の4つです。
- 分別、保管
- 収集、運搬(積替)
- 中間処理
- 再生処理、最終処理
産業廃棄物の処理には、各ステップにおける専門業者が対応する必要があります。それぞれの専門業者が行う業務内容について詳しく解説します。
➀排出業者
排出業者の役割は、産業廃棄物を正しく分別することです。廃棄物を適切に分別しなければ、排出業者に厳しい処分が科せられます。なお判断が難しいものについては、混合廃棄物として保管され、他の産業廃棄物とは別に処理する必要があります。
また、排出業者は廃棄物が収集・運搬されるまで保管しなければなりません。この義務は廃棄物処理法によって定められており、環境省令で定める技術上の基準に従い、生活環境の保全上支障がないように保管しなければならないとされています。
たとえば、廃棄物の保管場所には囲いを設置することなどが必要です。また、廃酸や廃アルカリなど危険を伴う廃棄物に関しては、保管場所を掲示するといった基準が設けられています。
➁収集・運搬業者
収集・運搬業者の役割は、産廃の収集・運搬を行い、必要に応じて積替を行うことです。産業廃棄物の収集・運搬には、都道府県の許可が必要です。また荷積みと荷下ろしで県をまたぐ場合は、通過するすべての都道府県の許可をもらわなければなりません。
産業廃棄物の積替も、飛散や流出を防ぐために囲いのある場所で行うことや作業中の表示をするなどの対策が必要です。
➂処理事業者
処理事業者の役割は、主に「中間処理」と「再生処理」、「最終処分」の3つです。
1つ目の中間処理とは、再生処理や最終処分をしやすくすることです。収集・運搬した産業廃棄物に対して、以下の処理を行います。
- 燃やす(焼却)
- 細かく砕く(破砕)
- 汚泥やふん尿から水分をとる(脱水)
- さらに細かく分別する(選別)
- 有害物質を取り除く(無害化)
- 廃酸を中和する(安定化)
2つ目の再生処理とは、リサイクルを意味します。再生処理は、以下の3つに分けられます。
- マテリアルリサイクル:本来の性質を活かして、他の製品の原材料にする
- ケミカルリサイクル:化学的に分解し、化学製品の原材料とする
- サーマルリサイクル:産業廃棄物そのものを燃やすか、固形燃料にする
3つ目の最終処分とは、産業廃棄物を埋め立てることです。最終処分では廃棄物の性質に応じて、以下の3種類の処分場で埋め立て処分されます。
- 安定型最終処分場:廃プラスチック類やゴムくず、金属くずなど処理しやすい5品目を処分する
- 管理型最終処分場:有毒ではないが、安定型では埋め立てられない廃棄物を処分する
- 遮断型最終処分場:有害物質を含む有毒な廃棄物などを処分する
産業廃棄物を適切に処理しないとどうなる?
産業廃棄物を処理する方法は廃棄物処理法で定められています。そのため、法律に違反すると厳しい罰を受けますので注意しましょう。
たとえば、不法投棄や不法焼却、無確認輸出を行うと、5年以下の懲役(個人のみ)または1,000万円以下の罰金が科せられます。併科される場合もあり、また法人の場合は罰金が3億円以下まで膨れ上がります。
マニフェスト制度とは
マニフェスト制度とは、不法投棄や不適切な処理を防止するための制度です。産業廃棄物の処理や収集・運搬を他社に委託する場合は、「マニフェスト(産業廃棄物管理票)」と呼ばれる書類作成が義務付けられています。
マニフェストには、主に以下の内容を記載します。
- 事業者が排出する産業廃棄物の種類
- 数量
- 運搬業者名
- 処理業者名
- 取り扱いに関する注意事項
マニフェストは排出業者が収集・運搬や処理を委託する業者に渡し、産業廃棄物が適切に処理されているか確認するためのものです。委託業者が不法投棄をした場合には、排出業者も罪に問われる場合があるので注意しなければなりません。またマニフェスト義務に違反した場合にも、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されます。
まとめ
産業廃棄物は、処理を委託した業者だけでなく排出業者にも責任が発生します。もし委託業者が不法投棄などを行った場合には、排出業者にも罰則が科される場合があります。これは家庭から出る一般廃棄物でも同様ですので、適切な方法で処理してくれる業者を見極めることが重要です。
GoodServiceは産業廃棄物収集運搬業の認可を受けており、産業廃棄物だけでなく一般廃棄物の処理にも対応しています。粗大ごみや不用品などの一般廃棄物でお困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。